映画『夜空はいつでも最高密度の青色だ』
この話題は、どんなに時間がかかっても書かなきゃダメだと思い、書いてみる。
『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』予告 - YouTube
『夜空はいつでも最高密度の青色だ』はもともと詩集。最果(サイハテ) タヒが書いた。
その一部分を使いつつも『舟を編む』『バンクーバーの明日』を手がける石井裕也監督が現在の新宿や渋谷に生きねばならない若者に焦点を当てる。慎二と美香という2人が主人公である。
予告編を見て、多分好きになる映画だろうなとは思っていた。けども、主演のうちのひとり、池松壮亮が今まで演じた役にあまり良い印象は持ってなかった。私が知っている池松壮亮の出演する作品は、
- 夜のピクニック
- 砂時計
- 大人ドロップ
- 海を感じる時
など、どちらかというと虚無感を感じるような、少し人とは違う事情を抱えているような役柄が多かった。
だから、見ている私も感情移入している時、人間の刹那的なもやもやとした気持ちが浮かび上がってきて、しんどくなってしまうこともしばしば。
でも、今回の作品の役は違った。ちゃんと慎二という役が生きてるって直感的に思った。
些細なことで亡くなってしまうあの人や
腰が痛くて単発バイトを辞めてしまうあの人など、彼の周りにいる人は、ありがちな簡単な理由で彼とは別の世界で生きようと離れる。
だけど私はそういうものは仕方がないと映画を見て思う。ちょっとした出来事で人を動かしてしまうのが社会なんだって現実とリンクをさせながら、共感する。
離れていく者がいるからこそ、とても彼が活動的で"生"を表すキャラクターがスクリーンを通して鮮明に分かる。決して教科書のような生き方はしていないけれど、だからこそリアルに思える。
逆に、石橋静河演じる美香は東京の病院で派遣の看護師。毎日誰かしら死んでしまう現場にいる。亡くなった人がいたベッドの掃除もする。人の死に際で働いている彼女はその雰囲気に飲み込まれてしまっている。
(かといって帰る場所も、片親が死んでしまって居心地の悪い。)
この対比は、日雇いという流動的な場所で働く慎二とは違い、固定的で停滞しがちな病院で働く美香の生活を鮮明に表している。
だからこそ
若者の街、渋谷で出会ったことは偶然でしかなく、他人には大したことがないと思われがちだけど本人たちには必然で運命的に思えたんだと思う。
物語を進めて行くにつれて、停滞している若者が少しずつ前向きになっている姿はとてもカタルシスを感じた。
無理に最後だけ取って付けたハッピーエンドでなかったのもなお良し。
東京という歌が入ってくるのも良い。
今年ベスト3に入る映画。
これはDVD化したら絶対に買わなきゃいけない。この感情を忘れてはいけないと思う。
以上、映画『夜空はいつでも最高密度の青色だ』レビューでした。